マジシャンが手足を縛られて水槽の中から脱出するマジックは、いつもハラハラさせられます。
なかなか手錠が外れない!
でも水中なので呼吸がもつのか!
と口から空気の泡を出して慌てるマジシャンを見ると、気が気ではありません。
一般の人が、水中に顔をつけて呼吸しないで耐えられる時間は、30秒か1分やそこらでしょう。
それに潜れば潜るほど体温も下がりますし、水圧もかかります。
ペンギンは、生活のほとんどを水中ですごします。
そして、一回潜ると、かなりの時間耐えられます。
いったいどのような仕組みで耐えられるのでしょう。
詳しくご説明いたします。
ペンギンの水中での呼吸の仕組みとは?
ペンギンは人間に比べると、体への酸素の取り込み方が違います。
動物は、呼吸した酸素を肺と血液と筋肉に溜め込みます。
人間は、60kgの人で120mlほどの酸素を取り込みます。
しかし、ペンギンの場合、その3倍の酸素を取り込むことができるのです。
その理由は、あの脂肪のかたまりのようなポッチャリした体型のイメージとは違って、実はあの体型のほとんどが筋肉で出来ていて、筋肉に酸素を蓄えるミオグロビンというタンパク質が豊富にあるからです。
ペンギンが水の中にいる時に、酸素がなくなってくると、その筋肉内のミオグロビンが酸素を供給してくれます。
ペンギンは水の中でも、陸にいるときとほとんど変わらないくらいに動けるという事です。
ペンギンの水中に潜れる時間は?
ペンギンの水中に潜っている最高の時間は、27分という記録が残っています。
しかも、だまってじっとしていたわけではなく、餌を求めて泳ぎまくっての時間です。
この記録は、たまたま計測する事が出来たペンギンの記録であって、野生のペンギンがもっとすごい個体がいるかもしれません。
ちなみにペンギンと同じく潜水時間が長い、イルカやアザラシ、最大のクジラも同じく筋肉のミオグロビンに酸素を蓄える事が出来ます。
もう一つ長く潜っていられる要因が、体温の調節です。
体の中で熱を発生させる事は、実は体の中の酸素が使用されます。
水の中にいると体が冷たくなりますので、無意識に体は温めようと酸素を消費します。
南極の水の中で、体温を維持するだけで酸素は消費されていきます。
しかし、ペンギンは体温を上げないで酸素を消費しないように、意識的に下げる事ができるのです。
その為、水の中でより長く潜っていられるというわけです。
まとめ
人間も肺、筋肉、血液に酸素をためるのは同じなのですが、ペンギンと人間は、筋肉に溜め込む酸素の量が沢山あるのと、体温を調節できる能力の差で、潜水能力に格段の違いが生まれます。
筋肉の中に、極小の酸素ボンベが沢山あるイメージです。
人間の持つ筋肉の中の酸素を蓄えるミオグロビンの量に、ペンギンとは根本的な違いがありますので、息を止めるギネス記録に挑戦する為に、いくら筋肉トレーニングでマッチョな体になっても、体に酸素を多く取り込めるという事はありませんのでご注意下さい。