動物が体の色や形を変えて周りの景色に溶け込み、身を守る様子を何度か見たことがある人も多いと思います。
進化の過程で生きる知恵を獲得し、力強く生きる姿には本当に感心しますが、イカの擬態はそのイメージをはるかに超えるスケールであり、イカの能力の高さには驚くことばかりです。
なぜイカはヤドカリに擬態するのか?
2017年5月に大学の研究グループが発表した動画が話題になりましたが、ご存知でしょうか。
ヤドカリに擬態するトラフコウイカの様子です。
トラフコウイカの原型をとどめない変身ぶりに、大変驚きました。
なぜ、イカが選んだのはヤドカリなのでしょうか。
そして、なぜ、ヤドカリに擬態できたのでしょうか。
ヤドカリの食料は微細な微生物であるため、小魚やエビなどを食料とするイカには好都合です。
ヤドカリに擬態すればイカは警戒されずに、小魚などに近づき捕食することができます。
実際ヤドカリに擬態したイカは、擬態しないイカに比べて2倍の魚をつかまえることに成功しているとも伝えられています。
また、かたい殻を持っているように見えるヤドカリに擬態することで、敵から身を守ることもできます。
ここまで形や色を変え、ヤドカリに擬態する技術にも目を見張りますが、今回の研究のトラフコウイカは研究室で生まれたもので、ヤドカリを見たことがないとの報告もされています。
ヤドカリを見たことがないということは、視覚情報によってヤドカリを真似しているわけではないということになります。
いままでイカは過去の様々な実験から、自然界にない市松模様やストライプなどにも擬態することができることも伝えられており、視覚情報をもとに真似をしていると考えられていました。
視覚情報からではない擬態であるとしたら、どのようにイカはヤドカリを知ったのでしょうか。
非常にミステリアスな一面を感じます。
また、泳がずに歩くことでも有名な体長7cmほどの小さなイカ、ハナイカはまるでヤドカリのようだとダイバーたちの間でも人気です。
2本の足を使い、海底を這うように歩く姿が目撃されています。
やはりヤドカリそっくりに擬態して、食料となるエビなどに忍び寄る姿が確認されています。
まだ解明されていないことが多いイカの擬態は、大変興味深いです。
まとめ
ここまで自由自在に変化することができる、イカの擬態する能力。
貝からの進化が、ヤドカリに擬態することを選んだのでしょうか。
視覚情報により、真似ることを得意とするイカの不思議さに疑問がさらに膨らみます。
ヤドカリに擬態する理由を考えていくほどに、イカの知能の高さや複雑な体の仕組みにこの地球に生きる生命の尊さを感じます。