皆さんは骨折をしたことがあるでしょうか。
私たちは大体どこを骨折しても必ず病院へ行き、レントゲンを撮り、手術からその後の療養まで一通りの治療を受けるかと思います。
人間同様、馬も骨折をしてしまうことがあります。
よく耳にするのは、競走馬が調教中やレース中のアクシデントにより脚を骨折してしまうという話です。
そういった家畜の馬が骨折をしたら、必要であればもちろん治療をすることになるでしょう。
しかし、馬の骨折の治療は難しいといわれているのです。
それはなぜなのでしょうか。
今回は骨折の頻度が高いといわれている競走馬で考えてみたいと思います。
馬の骨折の治療はなぜ難しい?
そもそも馬は動物であり、人間の言葉は通じません。
安静にするよう指示したところで通じるわけがありません。
骨折をしたらもちろん痛いですから、術後の療養期間中にもその痛みによって暴れたり、無理に立ち上がろうとしたりするでしょう。
そうなれば治りも遅くなりますし、ストレスも溜まってしまいます。
そういう根本的な点から、治療が難しい要因がひとつわかります。
また、骨折してしまうと馬自身の体重を残った脚で支えなくてはならなくなることから、負傷性蹄葉炎や蹄叉腐爛などの病気を発症してしまいます。
その病状が悪化してしまえばもはや自力で立っていることはできなくなり、そうなると最終的には命を落としてしまいます。
そして競走馬は、必要な治療費や治療期間中の飼育費などの金銭面で莫大な費用が必要となってしまいます。
その費用をかけても前述のような病気になってしまい亡くなってしまうリスクも大きいので、治療をしない選択をされる馬も多いのです。
その場合競走馬は処分されてしまいます。
馬の骨折の手術は進歩している
馬の骨折は、軽症であればギプスによる保存療法のみで済む場合もありますが、重症となると手術をしなければなりません。
その際全身麻酔を使用した手術をするとなると、麻酔によって意識を失う時に馬を寝かせる倒馬が一苦労であったり、覚醒後に馬がうまく立ち上がれないなどの理由から混乱・興奮し再び骨折してしまうなどの問題も多くありました。
そして、術後に完治するまでの間に蹄葉炎などの病気を発症してしまうこともありました。
手術をしても命を落としてしまう、という馬たちを減らすためにも馬の骨折の手術は研究が進められています。
手術法のひとつに、立体手術というものがあります。
これは、全身麻酔を使用せずに馬を立たせたまま、鎮静と局所麻酔のみで手術を施す方法です。
骨折部をボルトで固定し、骨折線を閉じると痛みが消え、すぐに歩くことができるそうです。
これによって、全身麻酔での手術後のトラブルや合併症のリスクが減少しました。
全ての骨折にこの立体手術が有効というわけではありませんが、こうして技術が進歩し骨折による命の危機から救える馬たちが増えているのです。
まとめ
馬の骨折の治療は、言葉が通じないことで治療中や療養中に思わぬ行動をとったり、合併症を引き起こすなどの術後管理の難しさがあります。
せっかく手術をしても、命を落としてしまうこともあるのです。
一頭でも多くの馬を骨折が原因の命の危機から救うために、その治療法や手術法も進化してきているようです。