夏に昆虫採集をする際に、カブトムシとカナブンが一緒にいるのを見たことがある人は多いのではないのでしょうか。
自然界ではカブトムシもカナブンもクヌギやコナラの樹液を主食としているため、同時に見かけることも多々あります。
よく似た昆虫に見えるカブトムシとカナブン。
2つの種類が交配して雑種が生まれてしまうことはあるのだろうか?
そんな疑問をもった人もいらっしゃるかもしれません。
実際、カナブンとカブトムシの交配はありえるのか?
繁殖するのかどうか、説明していきたいと思います。
カブトムシとカナブンの雑種は生まれる?
結論から言ってしまうと、カブトムシとカナブンの間に交雑種が生まれることはありません。
カブトムシはコウチュウ目コガネムシ科カブトムシ亜科真性カブトムシ族カブトムシ属の昆虫で、カナブンはコウチュウ目コガネムシ科ハナムグリ亜科カナブン族カナブン属に属する昆虫です。
見た目はよく似ていますが、2つの種はまったく異なる種族なのです。
そもそも雑種というのは同属、それも近縁種の間にしか発生せず、しかも同属であっても必ず雑種ができるというわけではありません。
もしあなたが、カブトムシとカナブンの雑種のような昆虫を見たことがあるとすれば、それはツノカナブンという外国産のカナブンだったのかもしれません。
なぜカブトムシとカナブンは交配しないのか?
なぜ交配が起こらないのか。
それは2つの生物の間で生殖的隔離という、雑種の形成を阻止する機構が存在しているからです。
求愛行動や配偶行動が異なるために、生殖行為が行われなかったり交接器の構造の違いによって、そもそも交配自体が成立しなかったりすることを生殖的隔離機構といいます。
上記以外にも地理的隔離など、生殖的隔離をもたらす機構はたくさん存在しています。
この機構が無ければ、自然界はもっと雑多とした生物に溢れていたことでしょう。
まとめ
複数のよく似た個体が同じ場所にいるにも関わらず、互いの間で交雑が起こらないことは不思議なことに思えるかもしれません。
しかしこれは、種の特徴が長い年月を越えて維持されるには、とても大切な仕組みなのです。
今回のテーマであるカナブンとカブトムシは、そもそも雑種が存在しない組み合わせでしたが、珍しい昆虫飼育のブームにより、今まで地理的に隔離をされてきた近親種がペットとして輸入され、地域固有の遺伝子組成を乱してしまう恐れがでてきました。
安易に昆虫を交配させようという考えは、それによって生み出された雑種が固有種を駆逐してしまう危険性も含んでいるかもしれないということを知っておいてください。